本当にあった怖い話・不思議な話


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【 五つ星怪談 】







☆━━━━ 【 紅い火青い火 】 ━━━━☆




 ある年の夏、山口県の壇ノ浦近くにある山中での出来事。



 私は地元の友人に連れられて、星空を堪能しに車で出かけた。

 最初はおしゃべりに花が咲いていた。

 いつの間にか、私と運転している友人以外の二人は急に眠気に襲われた様子。


 
 車中に何か嫌な空気があるのを感じたまま、車は山中に入った。

 それも獣道のような細い道を、枝をなぎ倒しながらスピードを上げて……。



 「ねえ……ここって道じゃないよね?」

 不安を感じて運転している友人の顔を見た。

 ところが、目は開けているものの意識というものが感じられなかった。



 スピードはどんどん増すばかり。

 「ねえ、みんな起きて!」

 眠っている友人たちを起こそうとしたが、揺すっても目を覚まさない。



 焦って大声を出しはじめた時、いきなり目の前がひらけた。

 助手席の後ろにいた私は体を乗り出してハンドルをつかんだ。



 思い切りサイドブレーキを引いて車を停める。

 だが、ほっとしたのも束の間。




 三人の体から、
紅い火の玉のようなもの
     
                      がユラユラと立ち昇ったのだ。




 と同時に、どこかから『ちっ、失敗した』『残念』という声も。

 さらに私の前で、得体の知れない声が一言。



 「何でこいつの体の中にだけ入れなかったんだ!?」

 そんな捨て台詞を残して、紅い炎は消えていった。
 
 私はもう怖ろしくて、半分泣きながら三人を起こした。



 「もう着いたの~?」

 「……ここ、どこ?」

 目覚めた友人たちは、今までのことは何も知らないような反応。



 私は必死で説明をして、とりあえず車から降りた。

 懐中電灯で照らすと、なんと三メートル先は断崖絶壁……。

 危うく引き摺り込まれるところだったと、冷や汗をかきつつ車へ戻ろうとした。


 
 すると今度は、車の周りをいくつもの紅い炎が囲んでいる。

 だんだん輪を狭めるようにして迫ってくる炎、炎、炎……。



 (なんなの? 誰か助けて!)

 強く念じたとき、今度は私たちを囲むように青い炎の輪が現れた。



 迫ってくる紅い炎と対峙するような青い炎。

 まるで、紅い炎と青い炎の合戦のようになり、やがて紅い炎が消えていった。


 
 (これって、いったい……)

 腰が抜けて座りこむ私たちのそばに、一つの青い炎が近寄ってきた。



 『……お主は、この世にもう一度、生を受けたのだな』

 とても優しげな男の声が聴こえ、青い炎もスゥーッと消えた。


 
 (お……お主って、いったい誰のこと……?)

 訳のわからないまま、その夜は星空どころではなく、すぐ帰路についた。


                  


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 ■投稿:桜羽由希さん(女性・東京都)

 ※五つ星級の怖さ、不思議さのある怪談です。多くは出版物に掲載されました。
 ※投稿のストーリーを変えることなく、雲谷斎が加筆・執筆しました。


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