本当にあった怖い話・不思議な話


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五つ星怪談







☆━━━━ 【 海の訪問者 】 ━━━━☆




 私が母のお腹の中に宿っていたときの、両親の体験。

 私の実家は、家の裏からすぐ海が見える田舎の漁港町だ。

 当時、両親は祖父母と同居し、二階で新婚生活をおくっていた。
 


 ある日、深夜といってもいい時間に、母は玄関のガラス戸を誰かが

 叩く音で目を覚ました。

 一階にいる祖父母が出ないので、自分が玄関を確かめに行くことに。




 しかし、もう玄関扉の擦りガラス越しに人影は見えなかった。

 訪ねてきた誰かは、扉が開かないのでもう帰ってしまったのだと思い、

 母はまた布団に戻って寝た。



 さて、次の日の晩のこと。

 また同じ時刻に、玄関を叩く音で目が覚めた。

 慌てて行ってみると、またしても誰もいない。



 今度はすぐ玄関を開けて確かめたが、辺りには人っ子一人いない。

 そして、また次の日。

 同じ時刻に玄関を叩く音がまたまた聴こえてくる。



 気丈な母もさすがに恐ろしくなって、父を揺り起こした。

 「ほら、聴こえるでしょ? 毎晩、誰かが玄関を叩く音がするけど、

 行っても誰もいないのよ。もう一回、確かめに行って来るわ」



 母はそう言って、寝ぼけ眼の父を残して玄関に行った。

 「……どなたですか?」

 すりガラス越しに問いかけても返事がない。



 思い切って母は玄関を開けた。

 すると、まったく説明のつかないことが起こった。




 誰もいない外の暗闇から、
       
母はガシッと腕を掴まれたという。
       




 そして、ズルズルと玄関から外へ引き摺り出されていく。

 悲鳴を上げて叫ぶように父を呼んだ。

 父がものすごい勢いで、二階から駆け下りてきた。


?
 何が起こったのかまったくわからないまま、父は何かに引き摺り

 出されようとしながら踏ん張っている母の姿を見つけた。



 目を丸くして駆け寄って行くと、母を物凄い力で引っ張っている

 ≪何か≫が暗がりの中にいるらしいことはがわかった。

 父は母の体に食らいついて、必死に抵抗した。



 しかし、その≪何か≫の力は圧倒的だった。

 真っ暗闇の中、何も見えないモノに、ジリジリと二人が引き摺られて

 いく姿は異様だった。



 海が見える県道まで引き摺り出され、さらに県道を渡った先にある

 海の方へと≪何か≫引き摺っていく。



 その力に抗うことはできなかった。

 二人が諦めかけた瞬間だった。



 嘘のように、ふっと引き摺る力が消えた。

 気がついて正気に戻ると、二人は浜に座り込んでいたそうだ。



 父は霊といった不可思議なことは一切信じない人だった。

 それでも「あれだけは本当に起きたことだ」と断言している。


                  


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 ■投稿:響槻さん(女性・石川県)

 ※五つ星級の怖さ、不思議さのある怪談です。多くは出版物に掲載されました。
 ※投稿のストーリーを変えることなく、雲谷斎が加筆・執筆しました。

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