本当にあった怖い話・不思議な話


【 メルマガ怪談集 】







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≪≪≪ 後ろの自転車 ≫≫≫
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 山口県Y市にある商店街で、某店の警備を終えた。

 片道五キロほどある警備会社の事務所に向かっていた。



 もうすぐ夜の九時になろうとしていて、人通りも街の灯りも少ない。

 小走りするよりも速い程度の、折りたたみ自転車に乗っていた。

 しばらく進むと、表通りの県道に出た。



 交通量は少ないとはいえ、スピードを上げた車の往来はある。

 そこで、平行して走る旧道を行くことにした。

 江戸時代から続く古い街道で、軒の低い家並みが続いている。



 通りに面した家々に明かりは無く、ぽつんぽつんと外灯があるだけ。

 旧道には行っても、自分以外の通行人はまったくいない。

 前にも後ろにも、無人の暗い道が延々と続いているだけ。



 車を避けてこのルートを選んだのだが、何だか心細くなってきた。

 「ふっ、ふぅ〜♪」

 突然、背後で鼻歌ともため息ともつかない男の声がした。



 驚いて肩越しに振り向いてちらっと確かめると、視界の端に<影>が。

 右の後方、二メートルくらい離れて、自分より頭ひとつ背が高い。



 足音がしない代わりに、別の自転車のタイヤの音がする。

 どうやらそいつも自転車に乗っているようだった。

 ライトは点けていないので、黒いシルエットが見えただけだった。




 
「ふっ、ふぅ、ふぅ〜♪」

         また、奇妙な声がした。





 調子っ外れだが、何かのリズムになっているようだ。

 音楽プレーヤーでも聴きながら、曲に合わせて口ずさんでいるのか。

 それにしても……何かおかしかった。



 ジャリジャリジャリと、タイヤが路面の砂を噛む音はしている。

 だが、それ以外の音がしない。

 ペダルを漕ぐ音もチェーンが滑る音も、まったく聴こえてこない。



 (なんだこいつ、気持ち悪っ……!)

 知らない間に後ろをついて来る自転車が異様だった。。

 いつの間に追いついて来たのか、そもそもどこから現れたのか……。



 それより……なぜ、追い越して行かないのだ? と思った。

 こっちは小径の折りたたみ自転車で、スピードは遅い。

 普通の自転車なら、とうに追い越しているはず。



 明らかに一定の距離を保って、後ろを<付けて来る>様子。

 止まって、やり過ごそうか……とも思った。

 もしかすると、こいつはこの世の者ではないかもという怖れも働いた。



 もし、振り返って誰もいなかったら、怖い。

 いや、生身の人間だったとすれば、もっと怖いかも知れない。

 幽霊より生きている人間の方が怖い、という教訓もある。



 見知らぬ男がニヤッと笑い、その手に刃物を握っているかも知れない。

 想像は連鎖反応のように、暗い想像を呼んだ。



 気味悪さをひたすら我慢して、とにかくそのまま漕ぎ進んだ。

 やがて前方から、車のライトが近づいて来た。

 道路脇の駐車場には人の姿も見えた。



 すると、後ろの濃厚な気配がスゥーッと消えた。

 ほどなく交差点に差し掛かり、事務所へと右折する体勢をとった。

 横断歩道を渡りながら来た道を見たが、どこにも自転車も人影もなかった。




 投稿のストーリーを変えることなく、雲谷斎が加筆・執筆しました。
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 ■投稿:善人悪人さん(男性・山口県)

 ◆雲谷斎のイッチョ噛み
  「ありゃ、幽霊も自転車に乗れるっちゅうことですねぇ。
  ママチャリに乗って付いてくる幽霊……パンクしたらええねん」

  
◆2018.02.10発行 逢魔が時物語メルマガ 【聴】にまつわる怪談より
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