本当にあった怖い話・不思議な話


【 メルマガ怪談集 】







耳を襲う信じがたい怪異
【聴】にまつわる怪談



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★★★ 訳アリ部屋 ★★★
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 まだ若い頃、営業車で隣県を回る仕事を任されていた。

 週に二泊三日くらいのペースで、 山形県を一人で走り回る日々。



 県北と県南に、常宿のビジネスホテルがある。

 仕事が長引き、ビジネスホテルに着いたのが夜中になってしまった。

 すると、いつものフロントの人が申し訳なさそうに言う。



 「すいません、今日は満室なんですよ」

 「他を探すのも疲れ果てるから、布団部屋でもいいからなんとか……」

 無理やり頼み込むと、少し躊躇する素振りをして口を開いた。



 「普通は使わない部屋が、あることはあるんですが……」

 「文句言わないから、寝れるならどこでもいいよ」

 私は半ば強引に、その部屋を借りることにした。



 しかし、私は疲れ果てていて、訊かなかったことを後で悔いた。

 その部屋が、なぜ普段使っていないのかを……。



 「すぐにお休みになってくださいね」

 フロントは鍵を渡しながら妙なことを言った。

 疲れている客への気遣いにしては、どこかヘンな物言いだった。



 不思議に思いながら、部屋に入った途端驚いた。

 夏なのに、まるで冷凍庫にでも入ったようにヒヤッとしている。

 冷房を強くしてるのだと思い、エアコンを見るとスィッチはOFF。



 その瞬間、この部屋になぜ泊まらせたがらないのかを悟った。

 よく見渡すと、あちこちに御札まで貼ってある。

 すぐ部屋を飛び出したいところだが、今更文句も言えない。



 忠告通りすぐ寝ればいいかな……と、自販機から缶ビールを買う。

 一気飲みすると、疲れも手伝ってすぐ眠気が襲ってきた。



 ウトウトしはじめたのと、ほぼ同時だった。

 部屋の近くには、客用と従業員用の階段がある。



 その階段を、誰かが物凄い音を立てて上がり降りしているのだ。




 そんな迷惑極まる騒音なのに、誰も文句を言う気配がない。

 次にその足音が、私の部屋の前に移動してきた。

 そして、ドアを開けることなく、いきなりベッドの周りを回りだす。



 うるさい足音は、数十人はいると思われた。

 その時点で、すでにこの世のものではないことは想像していた。

 (成仏してくれ〜)心の中で何回も願った。



 何十体もの騒霊達たちの正体はつかめなかった。

 男のようでも、女のようでもあり、高い声、低い声なのかもわからない。



 やがて、

 「聞こえるのか……? 見えるのか……?」

 というようなことを言いはじめた。



 (見えない! 聞こえない! 南妙法蓮華経!)

 必死で念じ続けて耐えていると、騒音は少しづつ静かになっていった。



 ふと気づくと、雀のさえずりが外から聴こえていた。

 恐る恐る目を開くと、カーテン越しに朝日がうっすらと射している。

 助かった、終わったのだと思った。



 目の下に隈をつくってフロントで、朝食を頼もうとした。

 「あの部屋は、普段は絶対使わないんですよ。ですから……」



 朝食券を渡しながら、

 「どうぞ、ご内密に。次回お泊りは半額にいたします」

 無言の口止め料を言い渡された。




 投稿のストーリーを変えることなく、雲谷斎が加筆・執筆しました。
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 ■さそりさん(男性・宮城県)

 
◆雲谷斎のイッチョ噛み
 「怪談の教科書に出てきそうな、完璧な訳アリ部屋ですやん。
  そんなに大勢の霊が暴れるやなんて、毎晩心霊パーティや」


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