本当にあった怖い話・不思議な話


【 逢魔が時物語メルマガ 】
episode. 8






実話怪談×小説

  どこにも無い怪談メールマガジン「逢魔が時物語」。
 その中から、実話怪談を掲載します。





まもなくPDF電子本が生まれます!
(実話怪談×小説×画像×動画)







 ─────────────────────────────── 
 
         episode.8「四軒長屋の主」
 ───────────────────────────────



 甲府市の湯村温泉の近くで、たいへん不思議な体験をしたという。

 韮崎にある会社から車で帰っていた道でのこと。
 道は温泉街を抜け、もう誰も住まない古い長屋がある地区を通る。

 道幅は狭く、車一台がギリギリなのでスピードを落とす。
 ここは以前、火事で住人が亡くなった屋敷が道沿いにある。
 その先には、昔からある古い長屋が何棟か。

 高いブロック塀がある焼けた屋敷の角を右折するとすぐ、
 狭い路地に農作業姿の老人二人が、ヘッドライトに浮かんだ。
 どうやら夫婦らしく、どちらも腰を屈めている。

 ヘンだなと思ったのは、車を避けようとしないことだった。
 車など意にも介さず、道の真ん中にボーッと突っ立っている。
 それどころか顔を右に傾けて、覗き込むようにして車に向かって来る。

 もちろん慌ててクラクションを鳴らした。
 さほどスピードは出ていないが、老人たちとの距離が近過ぎた。
 避けようとハンドルを大きく切り、休耕田にフロントを突っ込んだ。

 なんとか老人たちを避けることができたようだった。
 慌てて車から降り、事故を起こしそうになった辺りを確認した。
 すると……有り得ないことが。



 二人の老人たちは、
 ずっと先の古い長屋のある辺りを歩いていたのだ。



 トボトボと覚束ない足で、腰を曲げたまま。
 彼らにぶつかりそうになった場所からは、数十メートルも離れている。
 瞬時に車の前から路地を抜け、長屋の前まで行ったことになる。

 そんなことが出来るはずがない。
 そう思うと膝がガクガクし、体が震えてきた。

 あの得体の知れない老人たちは、空き家にすぅーっと入って消えた。
 車のアンダースカートは傷ついたが、ここに居てはまずいと思った。

 次の日、修理屋に車を預け、代車で昨夜の場所に行ってみた。
 火事で朽ち果てた屋敷を左に見て、また右折した。
 不可解な真相を知りたくて、再び古い長屋へ続く路地に入った。

 そこには人が住まなくなり、瓦礫が散乱した長屋が連なっていた。
 雨戸は破れ、雑草に埋もれてどの家も荒れ果てている。

 確か老人たちが入ったのは、四軒長屋の奥から二つ目。
 敷地へ車を停め、中を覗いてみた。
 廃墟同然の家には、古新聞の束が置かれているだけだった。

 首を傾げながら路地に出ると、犬の散歩をしている地元の人がいた。
 さりげなく、この空き家のことを訊いてみた。

 すると、この空き家の主は、もう何年も前に亡くなっているという。
 しかも、強盗事件が原因であった、と。

 私が轢きそうになった老人たちとは、つまり……。



 
───────────────────────────────
 episode.8「四軒長屋の主」 投稿:うなぎ犬さん(男性・山梨県)
 ───────────────────────────────
 電子本「逢魔怪奇探偵団」は、実話怪談投稿を元に雲谷斎が大幅に読み物として執筆。





メルマガ登録(無料)はここから