本当にあった怖い話・不思議な話


新・泣ける怪談






「泣ける怪談」の新作です。
大好評だった単行本「泣ける怪談」と共にジーンとしてください。









「腕の重さ」



  家族に不幸があった友人が、久しぶりに出社してきた。


 身内の不幸をまた引き摺っているのか、元気がない。
 どこか調子が悪そうなので、具合が悪いのかと訊いてみた。


 すると、友人は腕が重いとさすりながら言う。
 ふ~んと思って、友人の腕をじっと見ていると驚いた。


 なんだか腕がボヤけて見えるのだ。


 数日前の葬儀で、火葬場から帰ってからヘンだという。
 よく聞くと、その火葬場はペットの火葬場も併設しているらしい。


 たぶん、動物の霊を腕につけてきたのだなとわかった。
 いつも手首につけている数珠で追い払ってやろうと思った。


 数珠を手首から外し、友人の重いという腕に近づけた。
 すると、ヒュンッ!
 瞬間、こっちの腕に来てしまった。


 友人は腕が軽くなったと喜んでいる。
 ところが、今度は自分の腕がずんずん重たくなっていく。
 だんだん肌の色も変わっていくように見えた。


 重い腕をもう一方の腕で支えながら、ふと思った。
 この動物霊は寂しいのじゃないかと……。


 犬なのか猫なのかはわからない。
 おそらくは室内で飼われていたペットだと思われた。




 生前はいつも飼い主に抱かれ、
   腕の中で甘えていたのだろう。




 亡くなっても、愛された飼い主との『想い出』は残る。


 まだ魂の未練が、この世を離れ難かったのかも知れない。
 完全に消滅するまでの時間は長くはない。


 温かかった飼い主の腕を求めて、憑いていたのだとすれば
 よく理解できるし、憐れでもある。


 一日経った翌日、腕は元どおりになっていた。
 きっと、旅立ったのだろう。





  投稿 arrowさん
 ※メルマガ等掲載にあたり、雲谷斎が原文を全面的に訂正執筆しています。









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