本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<読者のコワイ体験談>

【逢魔が時メルマガ2010.4月 ランキンランキン第4位 47.00点





−禁断のタイトル−


■■■sakuraさん(女性)からの投稿■■■





 『あなたのところにも霊が……』

 あからさまにちゃちなタイトルだった。
 中学生の好奇心を刺激するにはもってこいだったのだろうが。

 中学生向けの全国版雑誌。
 夏を迎えると必ず「怖い話」の特集が組まれる。
 妙にリアルな挿し絵のついた体験談や伝奇談。

 その中の一つのコーナーがそれだった。
 この話を知った人のところにも霊が現れるという話を集めたページ。
 実際に起こるわけなどないのだ。

 全国で何千という読者が読むのだから。
 読んだ人一人一人のところに現れていたら霊だって大変だ。
 第一、本当に起こるのだったら、そんな危険なものを全国版の雑誌に
 載せるわけがない。
 
 冷静に考えればこんな結論はすぐに出てくる。
 でも……と彼女は思った。

 この言いようもない恐怖は何なんだろう。
 霊感の強い友達に話したら気も楽になるかもしれない。
 けれども運悪く、ちょうどゴールデンウィークに突入したところだった。

 わざわざ電話をかける気にもなれない。
 こんなことで怖がってるなんて、恥ずかしくて言えない。

 背中の辺りにちりちりとした恐怖を背負いながら、彼女は夜を迎えた。
 眠ってしまえばいい。簡単なことだ。

 目をつぶってじっとしてれば、すぐに眠りが訪れるはず。
 よけいなことは考えなくていい。
 
 しかし、脈拍はどんどん高くなる。
 心臓の辺りから何か熱いものが体中に広がっていく。
 この寝苦しさはなんだろう。

 なんども布団の中で寝返りを打つが、胸苦しさはいっこうに治まらない。
 ……そして。
 妙に冴えた耳に、その音は響いた。



 
コンコン、二階にある彼女の部屋の窓を叩く音。



 そう、ちょうど少し伸びた爪の先でガラスを叩くような、そんな音。
 彼女は頭から布団をかぶり、必死で記事に載っていた「おまじない」を
 口にした。

 いや、声には出なかったかもしれない。
 何回も何回も繰り返して、やっと異様な気配は消えた。
 そして、何事もなかったかのように朝が来た。

 彼女は昨夜の恐怖を思いだし、今まで「霊」や「怪談」に対する自分の
 態度があまりに軽薄だったことを後悔した。
 そして、今夜のことは口にするまい、と思った。

 ……そして数カ月後。
 中学校には林間学校という行事がある。

 文字どおり、山の中の宿泊施設に一泊なり二泊なりしてアウトドア体験を
 する行事である。

 そして、中学生にとって「宿泊」とはすなわち、「怪談」なのである。
 夜になると、さっそく女の子たちが集まって「怖い話」が始まる。

 こういうところに出てくるのはたいてい「友達の友達」の体験談と
 相場が決まっている。

 「友達の友達」の話だからこそ、安心して聞けるものだが、若い少女
 たちの好奇心はそれでは収まらない。

 「誰か、ほんとに体験した人いないの?」

 この声に思わず彼女は「私……あるよ」と言ってしまった。

 話の内容は言わないつもりだったら、初めから「ある」などと言わなきゃ
 いいのに、つい言ってしまったのだ。

 心のどこかでもこんなとっておきの話をしない手はない、と思っていた
 のだろう。
 反省したとはいえ、彼女だってまだ好奇心旺盛の中学生なのだ。

 「でも……ほんとに出てきたから言わない」

 この上なく思わせぶりな言い回しだが、なんとか彼女はそれで切り抜けた。
 かえって妙なリアリティがあったのだろう。
 その場はそれで収まり、解散ということになった。

 ほっとしたような残念なような、複雑な気持ちの彼女を呼び止めたのは、
 さっきの輪に入っていた一人の少女だった。

 「さっきの話、聞かせてよ。誰にも言わないから。出てきてもいいから」

 何度かは断った彼女だったが、ついに自分の体験談を話してしまった。
 
 その夜。
 彼女はさっきの少女と枕を並べて寝ていた。

 一人ではない、という安心感があるとはいえ、やはり寝付けなかった。
 昼間、盛りだくさんの行事をこなしたはずなのに、だ。

 隣の友人をそっと窺うと、やはり起きているようだった。
 そして……やっぱりあの音が響いた。


 窓ガラスに、延ばした爪で叩いたような、コンコン……。


                         (「聴」カテゴリー)


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          ★雲谷斎のイッチョ噛み★

                ▼

「上質な奇談の小品ちゅう感じに仕上がってますねぇ。ボワーッと情景が
 浮かんできますわ。虚飾を捨てた簡潔なレトリックがええなぁ」
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