本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<本 編>






∴‥∵‥∴‥∵ 問題のマンション ∵‥∴‥∵‥∴


投稿:セバブーさん(女性)
執筆:雲谷斎



 思い起こせば、あのマンションを出て今年で十数年になる。
 ということはあの事件が起きてから、二十年以上が経つことになる。

 初めに借りたアパートは新築だったが、日当たりの悪いワンルームで、
 部屋にいるのもなんだか嫌だった。
 一年経ってから、『問題のマンション』に引越した。

 東京立川の駅からはやや遠かったが、職場には近かった。
 管理人付き十一階建て、エレベーター二機付き2DKマンション。
 家賃は意外と安い四万九千円だった。

 「空いたばかりのお部屋です」
 不動産屋でにこやかに言われ、南向きの明るい部屋を見せてもらい
 飛びついてしまった。

 今考えると変なこともよく起こった気がするが、その時は本当に何も
 感じなかった。

 空いたばかりの部屋……。
 でも、見せてもらった部屋はやっぱり変だった。

 なぜ、天井に一センチも埃が溜まってるのか……?
 畳の黒さはいったい何……? 
 風呂場のタイルが剥がれている訳は……?

 でも、その時の私は掃除をすればいいや、としか考えなかった。
 普通は部屋が空いたらクリーニングが入るものだが、それすらなかった。
 あまりに世間知らずだった。




 

       
何も知らず、私はそのマンションに住んだ。




 初めの二年は特に問題もなく過ぎた。
 問題が発生したのは、隣の住人が交代した三年目頃。

 毎晩、夜中の一時頃から三時頃まで、隣の人が壁を叩いてくる。
 挙句の果てにベランダ越しに「○○さん、変な声出さないで!」と、
 私の名前を叫んでくるのだ。

 私は毎晩の壁叩き攻撃に備え、八時頃から寝ていたから、
 変な声なんて寝言じゃなければ出すはずもない。

 ましてやマンションの壁はけっこう厚かったので、寝言だとしても
 筒抜けになるようなことはない。

 とりあえず次の日、管理人のおばさんについて行ってもらい、
 隣になぜ壁を叩いたりするのかを訊きに行ったところ、

 「毎晩、男を連れ込んでいるでしょ。妙な声が聴こえてきてうるさい
  のよ」

 と身に覚えのないことを言われてしまった。

 きっと、被害妄想があるのだろう。
 何かあってからじゃ遅いと思い、実家に帰ることにした。

 その頃、私が行っていた美容室がそのマンション内にあった。
 実家に戻った後、その美容室に行った。
 隣のことをそこのおばちゃんに話すと、そのおばちゃんは、

 「そうねぇ……ここのマンションもいろいろあるのよねぇ。
  殺人事件もあったのよ!」
 とんでもない話をしてくれた。

 「えっ何? どこで? もしかしてそれは……」
 矢継ぎばやに訊くと、おばちゃんは古くから住んでいる人に訊いて
 あげると言って、調べてくれた。

 ……やっぱり、私が住んでいた部屋だった。

 一人暮らしの男性がその部屋に住んでいて、不倫の人妻が通っていた
 らしい。
 
 やがて別れ話の果てに人妻を殺し、バラバラにしてトランクに詰めて、
 多摩川に捨てたというのだ。

 その話を聞いてからは、怖ろしくてもう部屋に入ることもできず、
 逃げるように引越しをした。
  
              *

 私が住んで何にもなかった二年間とはいっても、今思い起こすと
 いろいろ無意識に防御をしていたようだ。

 ドアスコープが妙に気になり、何かで隠さなくちゃと思い、
 たまたまそばにあった御札を貼っていた。
 玄関に盛り塩を置きっ放しにしたり、鬼のお面を飾ったりとか。

 その効果か、家に入れなかった霊はきっと隣に行ってしまったに
 違いないという結論になった。

 美容室のおばちゃんの話によると、私が越してくるまで、
 毎日管理人さんがお線香を上げに行っていたという。
 管理人のおじさんは、私が引越しした途端亡くなったとか……。

 そういえばこんなこともあった。

 弟の友達が引越しを手伝ってくれたが、部屋にあったヌイグルミを
 気に入ったみたいだった。
 お礼も兼ねて、よかったらお子さんにどうぞ、とプレゼントした。

 その人が住んでいるのはアパートの二階だったが、ヌイグルミを
 あげたその日ぐらいから、天井から足音がするようになったそうだ。

 事情を知っているその人は『まさか……』と怖ろしくなり、
 ヌイグルミを車のトランクに入れ、そのまま車を売ってしまったという。




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        <本編「問題のマンション」データ>

 ■原作投稿者:セバブーさん(女性)
 ■2008年度 読者が選ぶランキンランキン第5位  67.50点
 ('08年に発行した逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果)

 投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。

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