本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<本 編-2009>






∴‥∵‥∴‥∵ 林間学校 ∵‥∴‥∵‥∴


投稿:Hiさん(男性)
編集:雲谷斎



学校行事の夏の林間学校。

舞台は超有名な観光地某湖に浮かぶ小さな島。
湖の中にある小さな島の割には、キャンプ場の規模はけっこうなもの。
背の高い松の木が鬱蒼と繁る中に、三角形のテントがズラーッと並ぶ。

キャンプ場のテントはの屋根型テントです。
生地は分厚くって相当ごっつい代物だった。

支柱やフライシートからは太い張り綱がピーンと、ごっついペグに
結わえてあり、頑丈そのもの。

島は真ん中が小山のように高くなり、ごつごつした岩と背の高い松の
林に覆われ、上には古い神社があった。

小山のまわりには、島を一周できる遊歩道がある。
テントはその道の湖側、炊事場等は山側という風になっていた。




さて、林間学校二日目のハイキングも終わった夕方。
夕飯の準備の前のぽっかり空いた自由時間。

本来なら一番楽しい時間であるはずなのに、昼間の豪雨のハイキングで
全身びしょ濡れになり、やっと乾いた服に着替えられたという状況では、
小雨になっても散歩でもという気になるわけもない。

それぞれの班毎に、テントの中で馬鹿話をして過ごしていた。
私たちのテントは怪談話で盛り上がっていた。

昼の豪雨はおさまったとはいえ、空には黒雲がたちこめ、おまけに
キャンプ場は鬱蒼とした松林の中。
テントの入口を閉めると、真っ暗になってしまうので全開にしていた。

そんな時、香川先生がテントの前をふらりと通りかかった。
この先生はクラスの担任ではないが、私の所属するクラブの顧問だった。

なおかつ先生のクラスには、守岡クンとか有田クンといった親しい友人が
いたこともあり、顔を合わせれば必ずからかわれるか怒られるという関係
だった。

「おっ! 伊勢! お前、守岡見なかったか?」

私はテントの入口に座っていたので、すぐ目についたのだろう。
香川先生が声をかけてきた。

「守岡ですか? さぁー? ハイキングの時は見ましたけどね。
 どうしたんですか?」

「いや、またアレやってんじゃないかって思ってよ。ちょっと注意しとこう
 と思ったんだけどな。奴等のテントにいねーんだよ」

「じゃ、有田んとこでしょ。有田と折原クンは一緒の班ですから、
 そこでアレやってんじゃないですかー?」

アレというのは、別に煙草やシンナーやいかがわしい遊びではない。
『こっくりさん』のことだ。



一学期に、香川先生のクラスの守岡クン、有田クン、折原クン
その他何人かがこっくりさんをやっていた時のこと。

守岡クンに霊がとり憑いたようになって大騒ぎになった。
それ以来、こっくりさん禁止令が出されていたのだ。

「いや、有田んとこは今見てきたんだ。有田と折原が一緒の割には、
 まぁ真面目にスケベ話で盛り上がってたな……。そうかぁー、
 どこ行きやがったのかなぁー。ところでお前らは怪談話か?
 まさかアレやってねーだろうな?」

「やりませんよー。この班は臆病モンばっかですから」

「なんだよお前ら、幽霊なんて怖いのか? しょーがねぇーなー。
 じゃ、オレがこの島で昔あったとっておきの怖い話してやるか」

な〜んてニヤリと笑うものですから、私はもう大慌て。

香川先生をテントの中に入れたら、何されるかわかったものじゃない。

「せ、先生。守岡を捜してるんじゃないんですか? 守岡、今頃
 アレやってそうだなぁ」

「いいよ、もう守岡は。ほっぽっとけ! 有田、折原と一緒じゃなきゃ
 守岡はやらないから大丈夫だろ……。ほらっ! お前ら、奥に詰めろ!
 オレを中に入れろ!」



さて、そんな風に私達のテントで香川先生が怪談話を始めたその頃、
有田クンと折原クン達のテントでは……。

話も話題がつき、なんとなくしらけたムードが漂っていた。

「なぁ、もう香川(先生)来ねーんじゃねーのー」

「キャンプファイヤーの準備だってあるだろうしさ、大丈夫だろー。
 やろーぜー。順番に入口で見張りしてさ」

「そーだよ。せっかくの林間学校だぜ。やらなきゃつまんねーよ」

悪い相談というのはすぐまとまる。

              *

一方、私達のテントでは、
香川先生がテントの入り口の所にどっかと座って怪談を熱演中だった。

「ある夏の終わり、司法試験だかで浪人中のヤツがいた。浪人中だから、
 とりあえず一郎とでもしとくか。その勉強に疲れきった一郎が、
 一人でこの島にキャンプに来たわけだ」

「ちょっと先生、それホントの話なんですかぁ? 普通一人でキャンプ
 来ないでしょう」

「おっ! お前疑うわけ? じゃぁ今すぐ管理人のおじさんのとこ行って
 訊いてこいよ。オレだって去年管理人のおじさんに聞いたんだから……」

お話の出所が香川先生ではなく、キャンプ場の管理人ということであれば
それなりに信憑性も出てくる。

「その一郎は一人でキャンプに来たんだ。それは夏の終わり頃。
 観光客なんかほとんど来なくなった頃のことだったそうだ」

「おっ! なんか怪談っぽくなってきたじゃないですか」

「お前な、そんなこと言ってられんのも今のうちだぞぉ〜っ!
 でな、一日二日と一郎は湖を眺めたり、ボート漕いだり、島を散歩したり
 して過ごしていたんだが、それは三日目のことだったそうだ。

 管理人のおじさん、その時偶然見ちまったらしいんだ。ほら、このテント
 の横に遊歩道あるだろ? あれを桟橋の方に向って行くと、曲がるように
 なってるだろ? あそこん所に、ちょっと岩が湖に突き出してるとこある
 の知ってるか?」

そこは、キャンプ場からはちょっと外れた所で、岸から五メートルぐらい
岩が突き出していて、先端にいくにつれ徐々に湖の中に没していた。

「管理人のおじさんが、夕方片づけをしている時、その岩の所にその一郎
 がぼーっと突っ立てるのが見えたらしいんだ。その日は曇りだったんだ
 けど、風はなく湖面にも波はなかったんで、まぁ特には心配もしなかった
 らしいんだな。

 ところが、おじさんが何か作業をしてちょっと目を離したその後、
 何気なくの岩を見て一郎ると姿がない。
 驚いて辺りを見回したんだそうだ。
 そうしたら、岩の先七、八メートルくらいの湖面に、



 
腰から上だけが見えている一郎の姿があったんだ。
 




 そうしている間にも一郎はどんどん沖に進んでいく。腰から上が見えてた
 のに、あっという間に首から上だけになり、その首から上も湖面の下に
 見えなくなった。

 おじさんは大慌てでボートを出したらしいけど、一郎は見つからない。
 その後、警察に連絡入れて捜索が行われたけど、結局何も見つからず
 行方不明ということになったらしいんだな」

「えっ、それは自殺なんですか?」

「まぁそれ以外考えられないよな。駆けつけた家族が言うには、試験勉強に
 疲れ切ってた感じだと言ってたらしいし。まぁノイローゼによる自殺って
 ことなんだろ」

              *

一方、有田クン達のテント。

学校で『こっくりさん』を禁止されてから、クラスのメンバーだけっていう
のは久しぶりで、一同気合タップリ。

薄暗い島のキャンプ場。
空には黒雲が低く垂れこみ、夏の夕方だというのに湖の辺りだけ真っ暗。
対岸の灯りがやけにキラキラ浮き立って見えていた。

おまけに、おあつらえ向きに水元クン達のテントだけ湖岸近くにちょこんと
離れている。

こっくりさんが学校で禁止された原因に、守岡クンに霊がとり憑いた事件が
あったと言ったが、その時守岡クンが狂乱状態で暴れていたのを鎮めたのが、
有田クンと仲のいい折原クンだった。

狂乱した守岡クンは、霊感みたいなものが異常に強いというのは以前から
知られていたが、折原クンも同じように強いというのは、みんなその時
初めて知った。


さて、そのテントの中。

有田クンと、霊感の人である折原クン、それとあと一人でこっくりさんを始め、



 
いつものごとく十円玉が紙の上を滑り出していた。
          



「あなたはこっくりさんですか?」

十円玉はするっするっと「はい」を往復。
みんな思わずフーっと息を吐き、顔を見合わせる。

鳥居のマークにもどった十円玉に、有田クンが声をかける。

「今夜、雨でキャンプファイヤーは中止になりますか?」

再び
「はい」

「やったー!」

思わずみんな大喜び。
キャンプファイヤーなんかかったるいんで、中止になんねーかなーって、
みんな言っていたのだ。

「この島ってさ、暗くってなんか不気味じゃん? 霊がいるかいないか
 訊いてみようぜ」

一人がそんなことを言った。

「おー、それいいな。それ訊こうぜ。こっくりさん、こっくりさん、
 この島に霊はいま……」

「シーっ!」

いきなり折原クンが口元に指をあて、有田クンを黙らせた。

有田クンは、香川先生がまた来たのかと大慌て。

「ヤベっ! おい、外見てみろ!」

その有田クンの言葉に、見張り役の友人が入口のファスナーに手をかけよう
とした時。

「おいっ! 今そこ開けるな!」 

と、折原クン。
そこにいる全員、思わず折原クンの顔を見つめた。

「ヤバイ! 今、外にいる……。今開けたら大変なことになるっ!」

暗いテントの中、折原クンの押し殺すような声。

一つだけ点けている懐中電灯の橙色が、その顔を下から照らしている。

              *

私達のテント。

「でな、その次の年のことだったそうなんだ。やっぱり夏の終わりに、
 若い女性が一人で島にやってきて……」

「えっ! 話、終ったんじゃないんですか?」

「伊勢よぉー、お前バっカだなぁー。一郎が自殺しただけじゃ怪談でも
 なんでもないだろ。後があるんだよ。後が……」

「でもほら、守岡のことも心配だし……」

「伊勢、オマエ黙ってろよ。で、先生、それからどうなったんです?」

香川先生にはさっさとご退散願いたい私とはうらはらに、他のみんなは
先生の怪談話聞きたいようだった。

「ほぉ〜らみろ! いいからお前は黙ってろ! でな、若い女性が一人
 でキャンプっていうのも妙な話だなぁって、ほら、その前の年の一郎
 の一件もあるわけだろ?

 なんかこう、雰囲気も変だったらしいんだな。どことなくぼぉーっと
 してるっていうか、目つきが変に据わっているというか……。
 で、キャンプの受付に来たときに、飲み物を勧めたりしていろいろ
 話しかけたらしいんだな。

 そうしたら驚いたことに、一郎の友達だって言うんだとさ。管理人の
 おじさん、こりゃおそらく一郎の彼女だってピンときて、後追い自殺
 なんかされたらまた大事件だって思って、女一人でキャンプなんて
 危ないし、今はシーズンオフで管理棟に部屋空いてるからそっちに
 泊れって勧めたらしいんだな。

 そうしたら意外にもその彼女、素直に頷いて……。とりあえずは
 一安心だったんだけど、そうは言ってもずっと管理棟に居さすわけに
 もいかないし、一人にするのも心配だしで、まぁ他に客がいないのを
 いいことに、その日はボートに乗せて湖を案内したり、夜はバーベ
 キューをしたりでなんとかやり過ごしたそうなんだ。

 彼女は二泊の予定だったから、次の日は朝から応援呼んで、それとなく
 見張ってたらしいんだな。

 二日目も無事過ぎて、夜はまた彼女と管理人のおじさんと応援の若いヤツ
 みんなでメシ作ったり、花火やったりしてたら、彼女は来た頃とは
 見違えるように明るくなってきたんで、もう大丈夫だろって思ってたん
 だそうだ。

 いや、清楚な感じの綺麗な女のコだったんだそうだ。いかにもいい家で
 育ったんだろうなぁっていう素直な感じで、言葉遣いものすごく丁寧で。

 応援で呼んだ若いヤツなんか、もうぽぅーっとなっちゃって、明日の朝
 はボートで湖のどこそこに案内しようかなとか言ってたらしい。
 そうしたら彼女も、明日晴れるといいなーなんてニコニコ笑ってたらしい
 んだな。

 ところが……。
 次の朝、彼女がいつまでたっても起きてこないんで、こりゃマズイって
 部屋に行ってみたら、案の定部屋にはいない。

 もう、大慌てで島を捜したら……。
 例の一郎が湖の底めがけて歩いてっちゃったあの岩の所に、女物のサン
 ダルが揃えてあって……。結局、彼女の遺体も見つからなかったんだ
 そうだ」

「うぅぅぅーっ! 怖いですねぇー。その話……」

友人の青木クン、しみじみそう言うもんだから、香川先生もうすっかり
得意がっちゃって。
「ほらどうだ!」とばかり、私のことをジロって睨んでくる。

なんかシャクで……、だから言ってやった。

「先生、それだってその女の人が自殺しただけじゃないですかー?
 怪談じゃないじゃないですかぁー!」

「あーあー。まったくもうー。伊勢よぉー、オマエって本当にバカなん
 だなぁー。怪談はよ、これからなんだよ。これから。本当に怖いのは
 これからなんだよ」

「そうだよ伊勢。オマエは黙ってりゃいいんだよ。先生、それからどう
 なるんです?」

私は青木クンをはじめ、班のみんなから総スカンだった。

「うん。でな、そんなこともあったんで、その年はもうキャンプ場を閉め
 たんだ。夏ももうとっくに終わってたしな。

 で、次の夏が来たんだけど、なにせ自殺の行方不明が二年連続だろ?
 お客、気味悪がって来ないんじゃないかと心配してたらしいんだな。
 でも特にそういうこともなくって、例年通りお客がいっぱい来たんだ。

 でな、ある時親子連れの客が帰る時、チラッと言ってたのが最初じゃ
 ないかと思うっていうんだよ。

 その親子連れが言うには、迷子を捜してるようなんだけど、なんだか
 唐突で、ちょっとオカシイ人なんじゃないかって気味が悪かったって。

 親子連れが、迷子を捜しているなんて言うもんだからさ。
 ほら、これだけ大きいキャンプ場だろ? 迷子なんて日常茶飯だったから、
 管理人のおじさんも聞き流しちゃったらしいんだな。

 ところが、その後も何度かそんな話をお客から聞くことがあったんで、
 ある時ふと気になって詳しく聞いてみたんだそうだ。

 そうしたらお客が言うには、夜中に島の遊歩道を散歩してたら、桟橋の
 方角から若い女性が一人で歩いて来るのが見えたそうなんだ。

 あっちにテントはないのに、こんな若い女性一人で変だなぁーって思い
 つつも、そうは言ってもキャンプ場だしと思っていたらしいんだな。

 その女性とすれ違ってすぐに、その女性に呼び止められたらしいんだ。

『あの……、すみません』

『はいっ? えっ、なんでしょう?』

振り向けば、お嬢さん風な感じのきれいな女性。どこか憂いを帯びた目が、
そのお客の目をググッと見つめてくる。消え入りそうな細ーい声。



 『ちょっとお聞きしたいのですが……、
  一郎さん、どこにいるか知りませんか?』

 



『はぁ?』

『一郎さん、どこにいるか知りませんか?』

『一郎さん……?』

こくりと頷くその女。

『さぁ……』

そう言った途端、その女の目つき顔つきがギラリと変わった。

お客は、そのあまりの変容ぶりに思わずゴクリと生つばを呑んだ。
しかし、すぐに元のちょっと寂しげな感じの穏やかな顔に戻って、

『そうですか……どうもありがとうございました。失礼します』

女はそう言って深々と頭を下げ、向こうに歩いていく。

そこまで聞けば、もうその女って誰なのか、わかりきってるだろ?
でも一応、その女の人ってこういう人じゃありませんでしたかって、
そのお客さんに聞いたらしいんだよ。

そしたら顔の感じや体型、服装まで、あの時の一郎の彼女とピッタリ。
管理人のおじさんも他のスタッフも、もう肝潰しちまって……。
例の彼女が来た時にいた若いヤツ、たまたま横で聞いたらしいんだけど、
もうガタガタ震えちゃって、しばらく椅子を立てなかったらしい。

その後も毎年、必ず何人かその話をするお客がいるんだそうだ」

そこまで言って、香川先生は話をやめ、黙って私達一人一人の顔を
順番にじーっと見回した。


誰一人、何も言えない。
そして……、


「でな、お客がこうしてテントの中で過ごしたりするだろ。そんな時、
 テントの入口の辺りをサワサワって触れるような音がして、誰かが
 窓を覗いたようなそんな気配を感じたなぁーと思っていると、ふいに!

『あの……、すみません……。ちょっとお聞きしたいのですが、
 一郎さんは、どこにいるか 知りませんか?』

香川先生が、細い声でひときわ小さく『どこにいるか知りませんか?』
と最後の言葉のところだった。

先生は話に聞き入っている青木クンの顔のまん前で、
『知りませんかっ!』
って、いきなり声を最大ボリュームにしたもんだから、青木クン、
「うっ!」って声を出したっきり、そのまま固まってしまった。

香川先生、すかさず青木クンの肩をポンッと叩いたら、
青木クンその場にへなへな〜っとなった。

私達はわっと大笑いして、香川先生の怪談をスッキリ終えたわけなんだが、
その反面心に染み入るように妙にいつまでも残る怪談話だった。

その後、向こうの方から「香川先生どこですかーっ!」って呼ぶ声が
聞こえてきた。

「おっ! ヤベっ! すっかり長居しちまった。じゃぁな!」

先生は慌てて靴を履き、その声の方に行ってしまった。

              *

こっくりさんのテント。

「ヤバイ! 今、外にいる! 今開けたら大変なことになるっ!」

「えっ!?」

いつもとはまったく違う折原クンの強張ったその表情。

「な、な、なんなんだよー。折原ぁー?」

有田クン、守岡クンが霊にとり憑かれたようになった事件以来、
いつも首からぶら下げることにしたお守りを握り締め、
不安そうに折原クンの顔を覗き込む。

「今、オレの後ろにいる……。外からテントの中、覗くようにまわりを
 歩いている」

「お、おい、なんなんだよ、それぇー……」

有田クンはじめ、みんなは折原クンの顔を見入るばかり。
いや、怖くて怖くて、とてもじゃないけどそれ以外の方を見られない。

「しぃーっ! 今、入口のところに……」



その折原クンの言葉が終わるより早く、
      
           テントの入口の生地を何かが触るような音が……。



そして、それがかすかに揺れだして……。
まるで、何者かが外から入口を開けようとファスナーを探しているかの
ように、上、下、右、左、また下と入口の生地が揺れている。

突然、テント全体がゆさゆさと揺れだした!
それは、まるで支柱を掴んで力まかせに揺らしているかのように……。

有田クンも他のみんなも、折原クンさえも身動きひとつ、いや声すら
あげられない。

次の瞬間。
中にいる有田クン達にテント全体がウワーっと迫ってきて!

「っ!」



有田クン達のテントの近くにいた生徒の話では、水辺近くにあった
有田クン達のテントが急にわさわさと揺れだしたんで、あれっ? 
風が吹いてきたのかなぁと思ったそうだ。

ところが、そう思ったその一瞬後にテントはペシャンコ……。

近くにいた生徒達はもうビックリ。
慌てて水元クンのテントに駆け寄ったら、つぶれたテントから
「ワーッ! ワーッ!」って
もがくように有田クンと何人かが這い出してきた。

出てきた有田クン達、もう目の玉剥き出し状態でハァーハァーと
息をつくばかりで、何を聞いても答えられない状態。

なにがなんだかわからないが、こりゃ大変だと思った生徒の何人かが
担任の香川先生を呼びに走ったんだそうだ。
私のテントで聞いた香川先生を呼ぶ声というのはそれだったわけだ。

折原クンとあと誰かは、つぶれたテントの中で気を失ってたとかで、
その晩は有田クンの班だけバンガローに泊まったような記憶がある。

テントがいきなりつぶれたということもあり、かなりな大騒ぎになって
しまったのだ。


その場は香川先生はじめ、先生達の一喝で治まった。
その夜のキャンプファイヤーの時に管理人のおじさんが出てきて、
この湖ではまれに局地的な突風が起きるから、そのせいだろうという
説明がなされた。

先生の中には当然理科の先生もいるから、こういう山に囲まれた湖では、
積乱雲がある時に急な突風が起きやすいという補足の説明もあった。

まぁみんな、なんとなく納得し、何分か後にはお決まりの
♪燃えろよ燃えろ〜よって歌っていた。


有田クンとは小さい頃から親しかった私は、その時の状況を林間学校から
帰ってきてから有田クン本人から聞いた。

ただ、いつもの有田クンなら、その時々の状況を事細かく語るはずなのに、
なぜかこの一件に関してはおおまかな事を言うだけだった。

おまけに、あんなに好きだった心霊現象系の話も、林間学校から帰って
きてからはパッタリしなくなって……。


もしかしたら、他にももっと何かあったのかも?




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       <本編「林間学校」データ>

 ■原作投稿者:Hiさん(男性)
 ■2009年度 読者が選ぶランキンランキン第4位  67.00点
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 投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。
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