本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<本 編-2010>






∴‥∵‥∴‥∵ 七不思議 ∵‥∴‥∵‥∴


投稿:怪さん(男性)
編集:雲谷斎



学校の七不思議といえば、理科室の人体模型が動くとか、
ある場所の階段をある時刻に上ると一段増えているとか、
音楽室のベートーヴェンの目が動くとかが代表的。

じつは、それに関係する怖ろしい体験をした覚えがある。
あれは三年生の卒業が間近になった頃だった。

私の通っていた学校では、しばしば奇妙な出来事が起こっていた。

教室の机からいっせいに物が無くなったりする。
生徒が何もない場所で大ケガをする。

体育館の天井の骨組みになっている鉄パイプが落下したりする。
あるいは火の気のないところで火事が起こったり……である。

そんな異変が起こる度に教員らは、「よく注意しなさい」と
口を揃えて言うだけ。解決策はない。
あまりに常識の範囲を越えた事ばかりが立て続けに起こるので、
生徒の間では変な噂が流れるようになった。

その噂と昔からよく耳にする「学校の七不思議」が結びついた。
この学校にもあるというのだ。
まったくくだらない……初めはそう思った。

しかし、ある事故が起こった時、心底から七不思議に恐怖を覚えた。
あろうことか、学校で友人が事故死してしまったのだ。

友人は仲間と一緒に、廃棄が決まっていた屋上プールで遊んでいた。
彼らは『七不思議』に興味を持って、手掛かりを探していたという。
数日後、廃棄プールの中で彼は死んでいた。

プールに溜まっていた水を一杯呑み込んで、腹がパンパンに
膨れあがっていた。
底に生えていた苔や汚物をも呑み込み、腐乱しかけた状態で見つかった。

あまりの出来事に、私や仲間たちはただ唖然とした。
死んだ友人は運動神経が抜群だった。
行動力はあるが、決して無鉄砲な真似はしないヤツだった。

そんな友人が、たかが廃棄プールに行ったぐらいで死んでしまった。
あまりにバカげてる。

仮に不注意だったとしても、プールに落ちただけで死んでしまう
ものなのか。
しかも、運動神経の良いヤツなのに……。

……七不思議。
彼が興味を持ったこの言葉こそ、死の直接の原因かも知れない。
そう思うようになった。

仲間の間では、彼の死についての話題はタブーとなった。
みんな葬式では、彼について根掘り葉掘り訊ねられ、
精神的に疲れきっていた。

仲間の中でも神経質だったKは、忍耐の限度にきていた。
教室に入るなり、教卓と椅子を思いきり蹴り飛ばした。

血走った目でギョロリとみんなを睨みつけ、
「もう嫌だ!」と言い放ち、それっきり学校に来なくなった。
仲間の誰もが、Kのことを笑うことはできなかった。

事故から二週間ほど経ったある日、私は放課後の教室にいた。
夕方六時ぐらいで、すっかり暮れて辺りは薄暗かった。

(七不思議って、結局、何なんだよ……?)
ぼんやりとそんな事を考えていた。

これまでのそれらしき事件は、机から物が大量に無くなった
二年生の教室。
生徒が大ケガをした三階の廊下、鉄パイプが落ちてきた体育館。
火事で全焼した一階の倉庫、そして例の廃棄プールだった。

(まだ、五つか……)
もし七不思議があるなら、残りの二つはどこで何が起こるんだ……?
想像できるはずもなかった。
事故の場所や起こる事の程度も、何もかもがバラバラだった。

ふと、私は時計を見た。
六時を過ぎたばかりなのに、周りはもう真っ暗だった。

教室はひどく不気味だった。
この時間、いつもなら数人の生徒が残って自習などしているのに、
気がつけば誰一人としていない。
きちんと整頓された机の列がやけに怖かった。

突然、ガラッ! 大きな音がして黒板側の扉が開いた。
心臓が止まりそうになったが、現れたのは級友だった。

私の方をちらっとも見ることなく、真っ直ぐ窓際の机に向かう。
横に掛かった黒いカバンを取ると、すぐに教室を出ていった。

(なんだ、忘れものか。脅かすなよ……)
少し安心したが、なんだか嫌な感じがした。
今の級友は、やっぱり何かがおかしかった。

どこか様子が変というか、いや、それ以前に……。

それが何だったかを理解した私は、あまりもの恐怖に
歯がガチガチと鳴り始めた。

さっき、級友が向かった机、取っていった黒いカバン。
どちらも、廃棄プールで死んだ、あの友人のものだった。
教室を出ていく時、彼はこちらを見て笑っていたような気がした。

気がおかしくなりそうだった。
一刻も早く教室から出たかったが、もしもう一度『彼』と
会ってしまったら……と思うと、足が竦んだ。

ゆっくり深呼吸をした。
さらにもう一度深呼吸をした。

俺は何とか教室を出ようと思った。
簡単なことだ。『彼』とさえ会わなければ良いのだから。
そう自分に言い聞かせ、教室を飛び出した。

誰もいない各教室を横目に廊下を一目散に走り抜けた。
階段を駆け下り、あっという間に下駄箱の並ぶ出口に辿り着いた。
そこで私は硬直した。

下駄箱の陰に、後ろ向きに誰かがいた。
しかも、よく見るとそいつの手にはさっきの黒いカバンがあった。

……すると、そいつがゆっくりと振り向いた。
それはKだった。
「もう嫌だ」という言葉を残し、学校に来なくなっていたKだった。

「K! お前か」
そう叫んで駆け寄っていた。

「ああ……」
意外にもKの様子は普通だった。
手に持っていた黒いカバンを除いては。

「そのカバン、どうしたんだ?」
するとKは、まるで時間が止まったかのように私の目を見たまま、
ピタリと動かなくなった。

しばらくすると、Kはクククと喉の奥で笑い出した。
「そんなに知りたいか?」

だが、私は咄嗟に聞いてはいけないと思った。
「いや、オレもう帰るから。じゃあな」

そう言い残して、急いで靴を履きそのままKと別れた。
早足で自宅に戻り、ゾクゾクとした悪寒を感じつつ、
制服のまま布団に入って死ぬように眠った。

次の日、学校に行くと何やらクラスがざわついていた。
私は嫌な感じがした。
教室に入った途端、鼻をつく異臭に気づいた。
何とも形容し難い、排水溝かドブみたいな臭いだった。

教室の後ろでクラスメートが集まっていた。
そこは私の席がある場所で、机の上が緑色に染まっていた。
どす黒い、気持ちの悪い緑色だった。

(何だよ、これ……)
よく見ると、細かい粒々がびっしりと覆っているのがわかった。
紛れもなくそれは苔だった。
吐き気がした。思わず口を押さえた。

(廃棄プールだ……)
確信はなかったが、ほぼ間違いなくこれはKの仕業だと思った。

周囲に目を配っても、肝心のKが教室にいない。
仲間と一緒にKを探しに廃棄プールに向かった。

屋上に続く階段の『立入禁止』のプレートが、苔で汚れていた。
仲間と顔を見合わせ、扉に手をかけると鍵は掛かっていなかった。
扉を開け、一歩踏み出そうとした瞬間だった。

「ギャァァァァァァ!」
ものすごい叫び声がした。
Kだった。




叫び声のした廃棄プールの中を見ると、
苔まみれのKがいた。




奇声を発しながら飛んだり跳ねたり、手を振り回したり、
狂人のように暴れていた。

Kは昨日のあの黒いカバンを乱暴に振り回していた。
そのなりふりは、まるで何かを払い除けるかのようだった。

私たちはその光景を、ただ唖然と見ているほかなかった。
その後、知らせを受けた教員がやってきて、Kは押さえつけられ、
そのまま連れていかれた。

あの光景の異常な怖ろしさは今でも目に焼きついている。
その後、Kがどうなったかは知らない。
七不思議は、結局、何だったのかもわからない。

私はその後、両親に頼んで転校手続きを済ませてもらった。
よその県の学校に転入した。

そこでは何も変わったことはなかったが、今でも黒いカバンを見ると、
あの時のおぞましいすべてを思い出してしまう。




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         <本編「七不思議」データ>

 ■原作投稿者:怪さん(男性)
 ■2010年度 読者が選ぶランキンランキン第8位  66.76点
 (2010年発行逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果)

 投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。
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