本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


ここは「縛」の部屋です




−マネキンのような女/4−


          ■■■mazdaさん(男性)からの投稿■■■



   「苦しい!苦しい〜〜!!」
   私の祖母は火がついたように叫びだしました。
   私の母はおろおろしてその成り行きを見ています。

   すると、お坊さんが祖母に向かって、
   「どうした? 何がそんなに苦しいんじゃ?」
   そう話しかけるとともに、他のお坊さんにコップに水をもってくるように
   言いつけました。

   「うぅぅ〜〜……苦しい〜〜〜……」
   話しかけられた祖母は少し落ちついた感じになってきましたが、
   まだ苦しがっていました。

   そこのお坊さんがコップに水をもってきて、話しかけているお坊さんに
   手渡しました。
   「さぁ、飲みなさい。……ずいぶん苦しい目に遭ったようじゃなぁ。」
   「うぅぅ……ゴブ…ゴブ…ゴブ……」
   むさぼるように祖母はその水を飲み干しました。

   「ふぅ〜……」
   「どうだ? 気分は落ち着いたかな?」
   「はい……」
   「そうか、お主はどんな目に遭ったんだ?」
   「殺されたの……くやしい……」

   「そうか……お主は自分の名前は言えるかの?」
   「純子(すみこ)です」
   一瞬、私は母親の顔を見ました。母は泣いていました。

   その涙は祖母の哀れな姿を見てなのか、その純子という人を知っていてなのか
   私はその時はわかりませんでした。

   すると母は「純子おばちゃん? 純子おばちゃんなの?」
   やはり、母はその純子という人を知っているようでした。

   お坊さんはそこまで来たときに祖母に向かって
   「お主、見えるか? 今ここにきている身内の者たち、この者たちはお主の
   願いを聞いてくれるぞ。お主の供養は必ずしてあげよう。安心して旅立ち
   なさい。わかったな?」
   お坊さんは諭すようにそう言いました。

   祖母の中の純子という人は「はい。わかりました」
   と、とても安心したように言いました。
   お坊さんは「よし、いつまでもここにいてはならん。行きなさい」

   そう言って、また3人のお坊さんはお経をあげ、祖母の肩を「パン!」と
   祓いました。
   すると祖母は「フゥ〜〜〜〜」吐息を吐き出し静かに目を開き、
   「やっぱり、純ちゃんだったんだねぇ〜……かわいそうに」
   そう言いました。

   私はさっぱり訳がわかりません。
   このお寺の出来事を祖母と母親に聞きましたところ、次のような話でした。

   それは……。


   この純子さんという人は私の祖母の妹だそうです。
   警察官と結婚し子供が出来たのですが、その後結核にかかり、長い闘病生活
   がはじまったそうです。

   しかし、その頃の時代の医学は今と違い、療養所のようなところで
   ただ回復を待つぐらいの治療しかなく、自然に回復するのを待つしか方法が
   なかったそうです。

   そんな生活が続き、まったく回復の気配もなく、家族も本人も幼子を抱え
   疲れてしまったのでしょうか。
   当事者同士にしか分からない気持ちの葛藤があったのでしょう。




       その旦那はある日、
       ジュースに毒を混ぜ純子さんに飲ませたようです。




   青酸カリだったようです。
   血を吐きもがき苦しみながら、幼い子供を残しあの世に旅立たざるを
   得なかったその心境はどんなに辛かったか、それほど深く考えなくても
   分かるでしょう。

   なぜそんな事が……。
   一向に回復しない妻を見るのが辛くなって、楽にしてあげたかったのか?
   体の弱い妻が邪魔で疎ましかったのか?

   どんな理由だったのかは、今となっては本人にしかわかりません。
   ただ一つ、毒を盛られた純子さんの気持ちは無視されていたように感じます。
   その当時、幼い子供がいたことと、旦那さんが警察官だったことが
   この事件を覆い隠す結果になったそうです。

   一族から「本人が闘病に疲れ、自分で毒を飲んで自決した」
   そうした方が、事が穏やかに解決する。まさに死人に口なしです。

   喉が焼け、血を吐き悶え死ぬ気持ち……想像を絶する死への旅立ち。
   そして、隠蔽され誰も真実を語ろうとしない。
   暗く寂しい世界にいても誰も手を合わそうとしてくれない。

   辛く寂しかったのでしょう。
   でも、なぜ顔も存在も知らない私のところに純子さんは現れたのでしょう。

   そのお寺のお坊さんの説明では
   「たまたま、あんたが先祖とのつながりのパイプのようなものが太かった
   のと、波長が合うタイミングだったのだろう」とのことでした。

   その日は、このお寺のお坊さんにお経をあげてもらって供養をして
   帰りました。
   帰る電車の中で、祖母に「純子さんてどんな人だったの?」と聞いたら
   「……とても綺麗な人だった……スラッとしてて、マネキンみたいな人
   だったよ」と言っていました。




   追記

   私は今、これを書いたことが、はたして良いことなのか悪いことなのか
   わかりません。

   このことがあり、いろんな宗教にも興味を持ち本を読んだり体験入門
   したりしましたが、神とか仏とかいうものを今の宗教では何か違った
   方向に矛先を向けはじめていることに気がつきました。

   信仰の自由は確かにあるのでしょうが、これを読んで宗教的なことを
   言いたいのでないことをわかって下さい。

   ただ、ずいぶんと長い間、一人で辛かった純子さんのような人がいたの
   だということを知ってもらえたら、少しは純子さんの供養にもなるかな
   と思ったりもしています。

   読まれる方には全く関係はありませんが、どうか手を合わせてあげて
   ください。終
                               (bk409)






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