本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


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のっぺらぼう


■■■S・Kさん(男性)からの投稿■■■



ゴールデンウィークを利用して、私たち家族は今年も
キャンプに行った。

昨年までは、子どもたちにあまり負担にならないようにと、
近場のキャンプ場を利用していたのだが、
そろそろ子どもも大きくなってきたし良いだろうと、
少しだけ遠いキャンプ場を選んだ。

とは言っても奈良県の吉野の奥の方で、自宅からは
三時間弱の距離だ。

予約していたテントサイトにターフやテントを張り、
遅い昼食を用意して食べ、夕刻はキャンプ場の横を流れる
渓流に降り、息子や娘に網で魚を捕る方法を教え小魚を
捕って遊んだ。

夕陽に水面がきらきらと光り、宝石のように光る水しぶきを
上げて魚採りに興じる子どもたちの姿を見ていると、
知らず知らずのうちに溜まっていた日々の疲れが、
ゆっくりと剥がれ落ちるようにとれていくのがわかった。

テントサイトに戻った私はバーベキューの準備を始めた。
大量に用意した肉と野菜は、楽しい夕餉の中で
あっという間になくなった。

家族そろっての健啖ぶりに喜び、食後はトランプ、花火と
子どもたちの嬌声と笑顔に包まれて、時間は瞬く間に
過ぎていった。

明日も早いからと、テントに潜り込んだ私たちは、
昼間の心地よい疲れもあって、四人ともあっという間に
眠りについた。

どれぐらい時間が経ったろうか……。

眠りの中で、私は誰かがテントの中で立ち上がっている
気配を感じた。

娘か妻のようである。
ぼそぼそという話し声も、夢うつつの中で聞いたような
気がした。

「なんだ? トイレか?」
そういって私は重いまぶたをこじ開けた。

「ん? だれだ?」
寝ぼけてかすんだ目にはぼやけてよくわからない。

目をこすりながら、もう一度よく見てみると……。
 
そこにいたのは、テントの屋根から上半身だけを中に入れ、
宙づりの状態でこちらに顔を向けている女の姿だった。

しかも、目や鼻はない。



  
幼い頃、怪談で聞いた『のっぺらぼう』なのだ。


 
「そんなバカな……」

心の中でそうつぶやき、念仏を唱えながら目を再び
ごしごしとこすった。

目を開けた時には、もう何もなかった。
何を見間違えたんだろうと、テントの天井をいろいろと
眺めてみたが、見間違えるようなものは何もない。

しかし、見たものが見たものだけに私は自分を疑った。
幽霊らしきものならまだしも、『のっぺらぼう』だ。

おまけに手は、それこそ絵に描いた幽霊のように、
両手を顔の下で下げている格好だった。
いくらなんでも馬鹿馬鹿しい。

私は、寝袋に顔を埋め再び眠りに落ちた。

明くる日、キャンプの常で早く目が覚めた私たちは、
朝露でしっとりと濡れ、鳥がさえずるさわやかな
森の中で早い朝食をとっていた。

少し怖がらせてやろうと、昨夜の話をしだすと
妻は少し顔色を変えた。

「じつは……あたしも見たの」

家内も同様の体験をしていたのだ。

誰かが立ち上がっている気配。
私と違ったのは男の気配だったそうだ。

私が起き出したと思い、何だろうと目を開けた家内が
見たのは、のっぺらぼうではなく、中年の男性だった
そうだ。

テントの中で立っていたらしい。
 
何度か奇妙な目撃体験をしていて、あまりそういった
ことに怖がらない女だが、なぜだか今回は詳しく語り
たがらない。
きっと相当に怖かったんだろうと思う。

昔から様々なことがあった吉野の地だから、
妙なものがいても不思議ではないと思うが……。

しかし…。
のっぺらぼうだなんて……。

                        
yo2501







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